|
|
|
京都漆器工芸協同組合 理事長 遊部 尋志
|
京漆器は日本独自の工芸が確立された平安朝以来千二百年の歴史を持つ技法と脈々とその技法を受け継いだ職人達によって造られている漆器です。
漆は非常にすぐれた塗料ですが、その扱いは大変な手数のかかるものですが、その美しさ、奥深さはそれを扱う職人のみならず多くの愛好家によって永年愛されて来ました。漆のもつ特性の一つに速乾性でない事が有ります。その特性は漆で線を描き、塗込み、乾かない内に金粉を蒔く蒔絵文化は、この漆の特性を利用した代表的なものです。(20度
Cの温度と80%の湿度を適温として乾かします。)今一つの漆の特性は乾燥してしまえば非常に堅牢なものになるという事です。
考古学の世界で何千年も前の漆塗りの器物が掘り出されている事で証明されています。更に今一つ漆はすぐれた接着力をもっています。下地で器物に麻布を張ったり、和紙を張る時には、この漆を米のりなどをまぜて張り、接着します。この特性をよく理解し、すぐれた技法にて京漆器は作られています。
元来は漆器は日常品で有り、どこの家庭にも多く使用されていますが、歴史的には漆は貴重なもので有ったため、貴族のみ漆器を使用したり、江戸時代には桑、銅と共に漆は重要木として指定され、厳しくその用途等に規制をかけました。現代でも多くの日常品として使用されていますが、漆器はその扱いが難しい、あるいは高価だという先入観から代替品に、そのシェアーを奪われているのも事実です。私共の組合では漆に対する誤解や間違った先入観を解くため種々の機会をとらえユーザーと対話をしています。最近では若い人達の中にも塗りや蒔絵の作業を経験したいという人も増えています。職人さん達も進んで工房を開放したり、実演をしたり、その要望にこたえている人も出て参りました。
日本人が忘れ勝ちになって来た日本独自の文化には漆の製品は欠かせないものです。お正月の祝いには朱や黒の膳椀でお雑煮を頂く事を子供達に味わってほしいと思います。
茶の湯の文化にも漆製品は欠かせないものです。騒しい時代の変化の中に有って、心のいやしのためには、これらの日本の伝統的なものが大変有効に働きます。
日本の伝統文化は次世代に継承されなければなりません。
京都漆器工芸協同組合では、工人四十数名、その大半が伝統工芸士の資格を持ち、商部二一数名の協力のもと、ハイレベルな作品作りとその需要の拡大に努力しています。
このホームページを通じて、どうか漆に興味を持ち、漆製品を御愛用頂ければ幸甚です。
|
|
|